9月20日（火）
コンビニに寄ったら「チョコあ〜んぱん」のデカいやつが売っていた。「チョコあ〜んパン」はチョコパンを模した小さなお菓子で、これはそのパン版。馴染みのロゴや髭のおじさんがパッケージにそのまま使われており「すごい、チョコあ〜んパンがデカい、嬉しい」と思い手に取って帰ったのだが、よくよく見るとこのパンの商品名も「チョコあ〜んパン」で、「（重量が）チョコあ〜んパンの約18倍」と書いてある。チョコパンを元ネタにして小さくしたお菓子がチョコあ〜んパンで、それをデカくしたこのパンの名前もチョコあ〜んパンで、重量がチョコあ〜んパンの18倍で…？と考え始めると頭がおかしくなりそうだったのでやめた。パンは美味しかった。
9月21日（水）
友人から「夏を終わらせませんか」と連絡が来たので鴨川の河川敷で花火をすることになった。鴨川で花火するのはたぶん初めてだったので条例とかどうなってたっけ、と思いながら現地に向かうと、すでに花火に興じる別グループがちらほらいたので安心した。同志よ。適当な場所に陣取って腹ごしらえをし、数種類の花火をひととおり楽しんだ。少し離れたところからも「パァン」と打ち上げの音が聞こえてくる。さぁいよいよ残すところ数個…というところで、反射材つきのビブスを着た監視員らしきおじさん2人がやってきて「ちょっと花火確認させてね〜」と声をかけられた。我々が今まさに火をつけようとしていた箱型の花火のパッケージを懐中電灯で照らして、「ハイ噴出型ね、OK」「打ち上げ型は罰金5万円やからね」とのこと。「噴出型」なんて初めて聞いた。おじさん達から去り際に「さっき「パァン」って音聞こえたけど？」と聞かれたので「あ〜あっちのグループだと思います」と同志をあっさりと売った。どうやら花火にも色々種類があり、イリーガル花火が条例で決まっているらしい。何も知らずに打ち上げ型を買っていたら5万円取られるところだった。あぶない。誕生日が近かったので友人たちがハッピーバースデーを歌ってくれた。嬉しかった。
9月25日（日）
文フリ（文学フリマ）大阪に行った。最近疲れ気味だったので行くかどうか迷ったけれど、事前に目的のブースを調べて現地に着いたら直行して他のブースはほとんど見ずに出る、という作戦が功を奏した。何年か前に友人に誘われて行った似たようなイベントで、ブースを端から端まで見て疲れ切った教訓が生かされた。そもそも自分が好きな作家さんが集中するのは「随筆・エッセイ」分野で、小説にはあんまり興味がないということも改めて思い出した。途中、古賀及子（こがちかこ）さんのブースで「学生さんですか？」と聞かれた。最近あんまり言われていなかったこのフレーズ、また言われてしまった。もう30代も半ばだというのに。顔はマスクで隠れていたし、挙動とか話し方が幼かったということなのだろうか。まぁああいう場でごく少ない視覚情報から会話の糸口を見つけようとすると「学生ですか？」はありふれた切り口であるという気はするのだが。
会場を後にして京橋へ。京橋は昔、親戚の家があった街。親戚はもう引っ越したので京橋に訪れることはほとんどなくなったが、今日は近くの銭湯に入りにきた。駅から商店街に出ると最初にうどん屋の出汁の匂いがして、少し進むとパチンコ屋の音が耳に入り、そのあと焼肉屋の煙の匂いがする。いつも親に連れられて親戚の家に行く時、この順番で匂いと音がしていたことを思い出す。京橋はいわゆる歓楽街なのだが、猥雑な看板が昔よりも少し減った気がする。昔はきわどい格好をした女性の看板とかがもっと多くて、子供のころは気になるけど見ちゃいけない、みたいな気持ちで横を歩いていた。さらに少し歩くとラブホ街に入る。親戚の家があったのもこのあたりで、近くにあるホテルが「昭和レトロ建築」という触れ込みで本やネットの記事に取り上げられていた。店先にも「テレビで紹介されました！」「休日も平日料金♪」みたいな張り紙があり、ずいぶん敷居が低い感じになっていた。まだラブホの存在を知らなかった頃、普通のビルよりも派手な外見をしていて、「ご休憩」と書かれた謎の看板だけが出ているこの施設はもっと得体の知れない雰囲気を醸し出していた。親戚で連れ立って外食に行くときはこのホテルの前が通り道になるのだが、両親も、祖父母も、叔母も、誰も視線をやらない、触れようとしない世界。夏休みの帰省のことを「田舎に帰る」と言う人が周りには多かったが、自分は「都会に行く」という感覚だった。都会の中でも大人向けの、猥雑なところに。
親戚の家は古い木造建築で、建物はいちおう残っていたもののすっかりリフォームされていて、趣のかけらもない、しょぼめのゲストハウスになっていた。慣れ親しんだ場所の姿が変わってしまうと悲しい気持ちになるけれど、駅前の出汁の匂いとパチンコの音は変わらないでいてほしい。
