とりあえず日記

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生活の記録

2月11日(日)

フィールドレコーディングのワークショップというものに参加した。フィールドレコーディングに関する基礎的なレクチャーを受けて、録音機材を借りて、街に繰り出す。

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手元のマイクで拾った音が、ヘッドホンから聞こえてくる。これがとにかく新鮮な体験だった。前を歩く人の服が擦れる音、少し離れたところで話している子どもの声、すれ違う着物姿の靴の音、動物園のフラミンゴの声、後ろからやってくる車のエンジン音。あらゆる音が、自分の耳で直接捉えるのとは聞こえ方が違う。立ち止まってしばらく周囲の音に注意を向けていると、目は開いているけれどだんだんと焦点がぼやけてくる。外界を捉える力点が、少しずつ視覚から聴覚へと移っていくようだ。

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途中、ガイドの東さんが取り出した聴診器のようなマイクで、道端のガードレールに響く金属音を聞かせてもらった。東さんは「みんな普段聞こえていない音を聴くと喜ぶんですよね。赤ちゃんは太陽の光を見て喜ぶけど、私達はもう太陽を見ても喜ばないでしょう。普段聞いてない音を聴くことで、赤ちゃんのような体験をしているのかもしれません」と言っていて、なるほどと思う。自分を含めた全員が、ヘッドホンから聞こえる音に目を丸くして、嬉しそうにマイクに繋がったガードレールを叩く。機材は知覚の拡張装置だ。水中マイクを通して水中の音を聴いたりもした。

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合計で1時間半ほど、京都の岡崎周辺を録音しながら歩いた。20人ほどの参加者全員がヘッドホンをして、手には防風のふわふわをつけたマイクを持ち、先頭の東さんに至ってはパラボラアンテナのようなでっかいマイクを持っている。道行く人は物珍しそうに一行を眺めて「なにかの撮影?」「芸能人でもいるのかな」と話していた。しばらく歩き、静かなエリアを抜けて会場近くに帰ってきたところで、いきなりピアノの音が耳に入った。どうやら近くの民家でピアノのレッスンをしているらしい。家の前で立ち止まって、たどたどしいピアノの音に耳を傾ける。振り向くと、数人の参加者も同じように民家の近くで立ち止まっていた。

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