とりあえず日記

とりあえず日記

生活の記録

7月1日(月)〜2日(火)

7月1日(月)

梅雨らしい雨。先週は天気予報を見たら雨続きだったけれど実際にはあまり降らず、梅雨といってもそんなに降らないやんね、と思っていたがふつうに降る。夏といってもそんなに暑くない、冬といってもそんなに寒くない、季節の変わり目にいつも思うがすべて油断だ。

コンビニで警察署に提出する申請書をプリントアウトして、小雨の降るなか北大路へ向かう。商業施設の地下にある行政サービスコーナーに行き、目的の書類の名称「市町村の長の証明書」という文字列を探すのだが、書類の記載台にはそれらしきものが見当たらない。窓口で「すみません、”市町村の長の証明書”というのはここでもらえますか」と聞いた瞬間、ああ聞かなければよかったと思う。担当者は何やら手元で作業しながら高圧的で吐き捨てるような口調で「はい?”市町村の長の証明書”と言われてもどれかわかりませんがね」とこちらを睨みつけている。かどうかまではわからない。顔も見たくない。身体のたたずまい、声の調子すべてがこちらを見下し、一人の生物として見做していない、ということを物語っている。しかしここで負けるわけにはいかない。

スマホの画面を見せ「ここに書いてある趣旨のことが証明できる書類が必要なんです」と言うと「じゃあ身分証明書のことですか」と聞かれるが「身分証明書」がなんのことだかわからない。私たちの日常の語彙で「身分証明書」といえば運転免許証とか、ひと昔前にレンタルビデオ屋で提出を求められたような、健康保険証だけだと顔写真がないから単体ではダメなのかなと気にするような、そういう類いのもので、行政サービスコーナーで「身分証明書」を発行してもらうということの意味が像を結ばす、しかしこれは行政言語なのだ。

相手はこちらに「この書類をくれ」と言わせようとしている、それは言質を取るためだ。たとえば利用者がAという書類をくれといってその申請どおりAの書類を出し、利用者が思っていたのと違う、取り替えてほしいと申し出てきても「Aが欲しいと言ったのはそちらだ」と言い返すことができる。利用者が何を必要としていて、何がわからなくて、解決のためにはどうすればいいのか。そんな過程など知ったことではないのだ。そこに行政担当者が首を突っ込めば突っ込むほどに、「面倒」が増える。親身になって話を聞いて、「ええと、それなら身分証明書がそれにあたりますね、用意します」と言い、万が一利用者の求めるものと違っていたときに逃げ場がないのだ。あんたがこれを用意すると言ったんだろう、出し直せ、と言われるリスクが最小限に、最小限になるよう行動する。以前知り合った「元官僚」という肩書きを持った人間の顔が思い出したくもないが思い出される。彼が周囲に下していた指示命令の背後にあったのは常にそういう行動原理だ。

ということを思い出して余計に腹が立って頭に血が上って呼吸が荒くなって、気づいたら「身分証明書」を申請する緑の用紙の空欄を埋めていた。住民票の写しもここで申請するつもりだったが、あの担当者との接点を1mmでも減らしたいのでコンビニに行くことにする。そのほうが手数料も安いし。申請書も書かなくていいし。久しぶりにこんなにわかりやすく「嫌な気分」になった、とぷんすか住宅街を抜けて警察署に行く。

道中のコンビニのコピー機で住民票の写しを発行して警察に到着。受付で担当課の職員を呼び出してもらい、書類に目を通してもらうとどうやら管轄の関係で別の警察署に提出することが必要らしい。書類を準備しながら、心のどこかでうすうすそんな気がした瞬間があったことを思い出した。面倒だと思ったが、さっきに比べてこの担当者は親切で、書類にひととおり目を通してこういう書類があったほうが手続きがスムーズかもしれない、と助言をくれた。が、やっぱり今日手続きを済ませたかったという不完全燃焼感を抱えて近くのスーパーに寄ると大根などが安く、鞄いっぱいに詰めて歩いて帰る。こういうときは舐達麻を聴くにかぎる。

7月2日(火)

雨、ずっと雨だ。昨日の夜はインド映画『きっと、うまくいく』の続きを観て、だから劇中に出てくる「All is well」というフレーズが耳に残っている。妻が今週から向かうインド北部・ラダックの風景が出てきてとても綺麗だった。自分もいつか行ってみたいと思う。
それにしても頭も身体も重く、寝不足のせいかもしれず、はたまた気圧のせいかもしれず、その両方かもしれず、その本当の原因をつきとめることはできない。とにかく頭が動かない。こういうときは風呂に入るなどして「動く」方向にもっていくか、寝るなどして「休める」方向にもっていくかいつも迷うが、よく覚えていない。布団に入って目を瞑り、眠り、起き、レトルトのカレーを温めて食べ、水曜日のダウンタウンの配信のつづきを見て、眠り、起きるとわりあい身体が動くようになった。

買い出しがてら散歩に出る。湿気がすごい。スーパーを素通りし、適当な角で曲がり住宅街を抜け、斜面沿いに立ち並ぶ「邸宅」という言葉がぴったりの高級住宅群を眺めながら歩く。前からいかにも金持ちそうな、白のぴっちりしたパンツ、淡い色の麻シャツにベストを着たメガネの白髪壮年男性が歩いてきて、彼の後ろでは車3台分くらいは入ろうかという大きさのガレージがごうんごうんと音を立てながら今まさに閉まらんとしているところだった。ここが閉まりきる前にさっと潜り込んだら、みたいなことを想像する。スギ薬局でヘアオイルとカレールウを買う。ヘアオイルが感覚でいうと倍の値段くらいする。こんなに高かったけか。そういえばオリーブオイルもこんなに高かったけかと思ったことを思い出す。

歩いていると悪くない気分だが、家に帰り一瞬無の時間が流れると何かに持って行かれそうになる。その何かを追い払うように真空ジェシカのラジオのすでに過去に聞いた回を流しながらカレーを煮込む。手を動かしている必要がある。こういう日は何かを考えてもろくな方向に行かない。朝ドラ『虎に翼』はやはり主人公の寅子に勢いがないと物語がドライブしない。それはそうと第9週の演出はひどくなかったか。第1話冒頭に挿入された終戦直後のシーンに戻ってくる、というこれ以上ない重要な場面に至る寅子の心情変化の描かれかたが雑だった気がする。直言の懺悔のシーンとかも会話としてちぐはぐだった。花江があんなに重要なアシストをしているのに、いつのまにかコメディみたいな雰囲気にぬるっと移行していたのが気持ち悪かった。

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