とりあえず日記

とりあえず日記

生活の記録

8月31日(土)

台風が来る来るといいながら「迷走」して紀伊半島南の海のほうまで行ってしまった。風は多少あるが雨も降らず、もともとこの日は妻と浴衣を着て河井寛次郎記念館にでも行くつもりだったが閉まるのが早いので、夜の街に飲みにゆくことにした。祭りでもない日に浴衣を着て交差点を渡ると向かいのファミレスの2階の窓から親子がこちらを見て会話しているのがわかる。

居酒屋にゆき、深夜喫茶にゆき、カラオケにゆき、タクシーで帰った。久々に大学生のような遊びかたをした。カラオケの受付前で部屋が空くのを待っていると1階の客室から歌声が漏れてくる。部屋に向かう廊下の途中、狭い通路の右横左横からそれぞれ下手な歌が聞こえてきて、一瞬視界に入るガラス扉の向こうでは中年の男性がマイクを持った肘を高く上げて大声で歌い上げていて、この隔離された猥雑さがカラオケだなと思う。

昔、祖母の家が大阪は京橋の繁華街にあり、隣はスナックで、布団に入り眠ろうとすると決まっておじさんのエコーのかかった声が聞こえてきて、母は「下手くそな歌やなあ」といった。母はNHKの『のど自慢』も嫌いだ。休日の昼間のニュースを見て、12時になってあの「キンコンカン、カカカカカカン」と鐘の音が鳴ったところでチャンネルが変えられた。曰く「素人の下手な歌を聞きたくない」のだという。

こどもの頃、友人が「家族でカラオケに行った」と言っているのを聞いてずいぶん驚いた覚えがある。そのような習慣は我が家にはなかった。父親や母親がカラオケで歌っているところなど想像もできなかったし、自分が親の前で好きな曲を歌うなんて考えただけで恥ずかしかった。だから初めてカラオケに友人と行った日のことはよく覚えている。地元の駅前の、ビッグエコー。1階が受付で、らせん階段を上がると建物の屋上に出て、だだっ広い空間にプレハブのコンテナが等間隔でいくつも並んでいて、まさに「カラオケボックス」だった。いちおう持ち込み禁止だったが、お菓子やジュースなどをスーパーで買い込み、リュックに入れてボックスの中まて運んでこっそり広げた。

人前で歌うなんて恥ずかしい、と思っていたが一度歌ってしまえば気持ちがよかった。自分の歌を、友人は上手いとか下手とか言わずに、聞いていたかどうかはよくわからないけど少なくとも自分が歌っている間も同じ空間を共有して、友人は友人で気持ちよさそうに声を出していた。自分は当時熱心に聞いていたKICK THE CAN CREWバンプアジカンを歌い、音楽の趣味が少しちがう友人はラルクガガガSPを歌っていた。誰もたいして上手くはなかったけど、それで良かった。

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