とりあえず日記

とりあえず日記

生活の記録

12月30日(土)

眠れない。眠らなければと焦るとよけいに眠れなくなるので「別に眠らなくていいんですよ」と自分を欺くことで眠りにつこうとする。数日前はこの方法でうまくいったが体はそう簡単に騙せない。心の底では眠りたいと焦っていることが、自分自身にバレてしまっている。

昔、野宿をしたことがある。『野宿入門』という、野宿をポジティブな行為と捉えて野宿の楽しみ方や具体的な方法について書かれた本に影響された。当時の職場の同僚と京都駅前で飲み、終電がなくなったのでこれは野宿チャンスだ、とばかりに人通りの少なくなった通りをダンボールを探してまわった。著者によれば、野宿においてまず重要なのは寝具としてのダンボールの確保だという。もう細かくは覚えていないが、どこかしらの店先でダンボールを拾って、寝床になる場所を探した。

トイレが近く、人通りもあまりなく、横になっていても怒られない場所というのはそうそうあるものではない。京都駅前のような場所ではなおさらだ。しばらく辺りを徘徊して梅小路公園へと向かった。公園に着いてほどよい場所を探したけれど適当な場所が見つからない。ベンチがあったが、深夜だというのに同じコースをずっと散歩しているおじさんがいて落ち着かず、結局JR嵯峨野線の高架下を選ぶことにした。当時はまだ鉄道博物館のリニューアル前であまり整備されていなかったが、適度に周囲をフェンスに囲まれていて、それでいて人通りが少なく、開けた公園よりも安心感があった。はるか頭上に線路を支えるコンクリの塊があるだけで、何かから守られているような気がした。

しかし、いざダンボールにくるまって横になってみるとなかなか落ち着かない。周囲の些細な物音にも反応して、眠りにつくのに必要な安心感を感じることができない。ようやくうとうととしてきたと思ったら、ゴミ収集のトラックのバック音で目が覚めた。すぐ近くをテールランプを灯した大きな車がゆっくりと横切る。気づけば気温もぐっと下がっていた。あれは確か10月頃で、このままではダンボールでは寒さをしのぐことができないと思い、あきらめて駅に向かうことにした。時刻は深夜3時頃。阪急大宮駅までの道のりをゆっくりゆっくりと歩いた。道すがら、友人の住んでいるマンションの前を通りかかり、今頃寝ているのだろうかと窓を眺めてみたりした。とにかく街は静かで、時間が止まったようだった。ダンボールはどうやって処分したのか覚えていない。

そんなことを思い出し、リビングに放置した携帯にメモして、ふたたび床についた。しばらくしたら眠っていた。