とりあえず日記

とりあえず日記

生活の記録

12月22日(金)

病院の診察を終えて、次の用事まで時間があったので以前から気になっていた喫茶店に入った。前に読んだ雑誌によれば卵サンドが名物らしいが今は甘いものがほしいのでホットケーキとコーヒーを注文する。運ばれてきたコーヒーは思いのほか普通だった。コーヒーメーカーで淹れておいたものを再加熱していているように見えたけれど、器具の詳しいことはわからない。自分の舌が馬鹿なだけかもしれない。ホットケーキも普通だった。やたら提供時間が早いのでうすうす嫌な予感はしていたが、フライパンで焼いた様子がない。そういえばさっき厨房の奥から「チン」と音がした気もする。850円は勉強代ですね、とメープルシロップをドロドロにかけてホイップとあわせて口に運ぶ。

しばらくしてコーヒーともメープルとも違うにおいが鼻をついたので横を見ると高齢男性が座っている。ついさっき入店してきたおっちゃんで、足元をみると汚れた白のクロックスに素足だ。ズボンやニット帽にどうも藁のようなものがたくさんついていて、なんらかの事情を抱えているんやろうなと思う。予定まではまだ時間があり、もうしばらくここに滞在して気力をチャージしたかったのだが、あまり長く居られない気がした。おっちゃんが気を悪くしないよう、トイレに立って戻る流れでさりげなくひとつ席をずれたりしたあと、店員さんに2階って上がれないんでしたっけと聞いてみたが今日はもう使えないらしい。コーヒーを飲み干して外に出ることにした。

あてもなく歩き出してマクドに入るがコーヒーはもう飲んでいるしミルクに210円払うのもアホらしく、たむろする高校生グループの大声に耐えられそうもないのでやめた。冬でなければ鴨川沿いに座れば良いものを。とぼとぼと橋を渡る。顔を上げると、コンクリの大きな建造物が目に入った。最近移転してきた市立芸大である。ありがたき公共インフラ。このあたりは近ごろ再開発の進むエリアで、昔に比べてずいぶん雰囲気が変わった。人気のない古い公営団地や木造のお好み焼き屋があるかと思えば、すべてを塗り固めるようにあらわれる真新しいアスファルトにコインパーキング、新築マンション。

大学の敷地に入ると入場無料のインスタレーション展示がやっていたり、随所に学生の作品を展示するギャラリーなどがあった。学生さんが来場者に何やら熱心に説明をしている。すてきな公共空間だな、と思う。綺麗なお手洗いを借りて、最近どこの大学でも流行りのガラスでスケスケの講義室などを眺めてまわる。この1時間弱、飲みたくもないマクドのミルクに210円払うことなく、キャンパス内を散策して芸術に触れ、用も足すことができた。街中にこういう場所があることはありがたい。清潔で、明るく、入りやすい場所。いっぽうで、こういう場所を都合よく有難がる自分を後ろめたくも思う。以前西成のドヤ街を訪ねたとき、天王寺駅の北側にオープンした星野リゾートが目に入った。駅を隔てた向こう側とこちら側では全く別世界に感じられたことを思い出す。街が「クリーン」になっていくことをどう捉えたら良いのだろうか、と考えながら駅に向かった。

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