とりあえず日記

とりあえず日記

生活の記録

7月7日(日)

外に出ると日の出から間もないせいかそこまで暑くはなく、風が通り抜けて気持ちが良い。湖の向こう、とおくに風力発電のための風車やマンションなどがうっすらと見える。目の焦点が遠い。「空が広い」という感覚は京都にいても鴨川あたりに出れば感じることができるが、目の焦点が遠い、と感じることはない。海を見ているのともまたちがう感覚、視線のずっと先、しばらくは遮るものがないが、ずっと先には焦点が否応なくそこに合わさるような目標物が見える。ざぶんざぶんと岸に打ち付ける波の音、夕暮れと錯覚するような虫の声。岸壁をそそくさと徘徊して陰に隠れる足の多い虫のような生き物。どぼん、と音がしたほうの湖面が不自然に揺れている。魚が跳ねた。

職場の上司がショートメッセージで「生活のために何とか仕事に行っている」と書いていた。上司は上司で体調が思わしくないが、無理を押して仕事を続けているらしい。生活のための仕事。生活のための仕事。しかしそれでは「仕事のための生活」ではないか。無理をしないでください、ほんとうに、という意味のことを送ることしかできない。「生活のための仕事」というのは、もっとダイレクトな意味で使うことのできる言葉のはずではないか。こうして捻れてしまった形ではなく。

湖岸を歩く。釣り人を横目にしばらく行くと少し陰になった、ひんやりとした、人気のない場所に入り、進むと足下でさっきの足の多い虫のような生き物がぞわぞわと動いて草の陰のほうに隠れてゆく。がさがさ、がさがさ、と視界の端の草が揺れる。さっきの虫にしては影が大きく、雀かと思い目をこらすと蟹である。日ごろ目にするようなサワガニと比べると十倍はあろうかという大きさの、土色をした、ハサミの大きな蟹はゆったりとした横歩きでこちらの動きを警戒している。しゃがんで写真に収め、私が立ち上がると一気にスピードを上げて隠れてしまった。

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